おてんばマリヒメ
の巻

~美術工芸品の保存と修理~

姫様!

こんなところでまりなどされてはいけません!

だいだい伝わる大切なふすまにぶつかったらどうするんです!?

タクミノスケ

マリヒメ あら、タクミノスケ。

そんなに心配しなくても大丈夫よ。
全くあなたはいつもそうなんだから。

襖に穴を開けたマリヒメ 襖に穴を開けた鞠
驚くタクミノスケ

嘆くタクミノスケ あぁ、 とらの顔に穴が···
なんてこと。

姫、
だから言ったではありませんか!

殿にまた叱られるのは
この私ですぞ。

なんだか騒がしいのぉ、
一体どうしたというのじゃ。

ややっ!タクミノスケ、
おぬしが付いていながらなんてことをしてくれたのじゃ!

タクミノスケと、殿!

いや、わたくしは止めるようにと言っておったのですが、姫が言う事を聞いてくれんのです。
どうかお許しを。

ブンカザイノスケえぇーい、ごちゃごちゃうるさい!
すぐに修理に出せ!

タクミノスケはっ、承知致しました。

職人

タクミノスケ殿、修理ができました。前の修理からしばらく時を経ており、下地の木の骨組みもゆがんでいました。

そこで、ふすまは解体して、下地もしたりの紙も全て新しい良い材料で作り直しました。絵の破れてなくなったところには補修用の紙を貼りましたし、絵具が落ちそうな箇所には、にかわを使って接着力を回復させました。

タクミノスケ いやいやちょっと待て、おぬし。

穴が空いた虎の顔は、ないままではないか!

なくなったところには、きんぱくをはって色を塗って目鼻を描かなければ、修理をしたかいがないではないか!

おぬし、もしや手を抜いたのではないだろうな!?

職人 何をおっしゃいます、タクミノスケ殿。

絵がなくなってしまったところには、新しく色を塗ったり、顔を描いたりはしないものなのです。

かようなことをすれば、かえって元の絵の表現が台無しになってしまいます。

今回の修理では丁寧に絵具のはくらくめもしてあります。絵が描かれた時の姿をそんちょうした修理となっています。

変顔の虎

マリヒメそうじゃぞ、タクミノスケ。

おぬしもまだまだ勉強不足じゃな。

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