四季を通じて多くの人々で賑わいをみせる日本の祭礼行事には、伝統的な技術で作り上げられ、それぞれの地域に継承されてきた「民俗」ならではの造形の世界を見ることができます。
その代表的な例に、祭礼に曳き出される山車(山・鉾・屋台・ダンジリなど)があります。木工や漆工、金工、染織などの多様な技術を駆使して造られています。
山車は、神が天上から地上に降りてくる際の一種の乗り物で、自然の山を模した形状を基本としながら、日本の各地に実に様々なものがあります。
山型だけでなく、傘鉾型や行燈型、船型などがあり、曳く形式や担ぐ形式、二層や三層の構造もの、車輪の数も二輪、三輪、四輪と違いがみられます。全体に漆塗りをほどこし、かざり金具や彫刻、刺繍された幕などで周囲を飾った豪華絢爛なものが大半です。
また、からくりや人形を載せた山車もみられます。このような山車の出る祭礼行事は、京都の祇園祭がその代表的なものです。その影響を受けながら、日本の各地で、個性豊かな独自の山車文化が生まれました。
祭礼行事は、人々にとって、一年を平穏無事に暮らすために欠くことのできない大切なものだったので、わが町の威厳と誇りをかけて、山車の華やかさを競い合いました。それには、伝統を受け継ぐ高度な技術が必要とされたのです。
現在も各地にみられる山車は、先人の想いとこだわりを伝えています。山車本体や車輪、または装飾部分などが破損して、修理を行わなければならなくなった時には、祭礼行事を守り伝える保存会が主体となり、各分野の専門家や職人の方々が一体となって、正しい材料の選定や修理の方法を検討し、高い技術力を結集して修理を行います。
今日、伝統的な祭礼行事の多くは、民俗文化財として保護されています。山車は有形の民俗文化財として、祭礼行事は無形の民俗文化財として保護の対象となります。国は、それらのうち典型的で特に重要なものについて、重要有形民俗文化財や重要無形民俗文化財に指定して保護をはかるとともに、祭礼行事を支える様々な技術を「祭屋台等製作修理」として選定し、技術の継承や錬磨のお手伝いをしています。