文化財になっている石垣は、近世のお城で使われているものが代表的ですが、その他にも神社やお寺、庭園などにもあります。基本的にはとても安定していますが、地震や大雨等によって変形することや崩壊に至ることがあります。
石垣は石を積み上げるという、とてもシンプルな構造に見えますが、実は石材の材質、石材の加工方法、積み上げ方に多くの違いがある複雑な構造体です。そのため修理をする時には、それぞれの状況や特徴を理解した上で作業を実施しないと、完成した石垣が周辺と異なった結果になることや、構造そのものが違ったものになる可能性もあります。
このようなことが起きないよう、石積みの技術をもった職人が必要になります。しかし、職人になるには、多くの知識と経験が必要となり、その継承には大変な苦労が伴うため、近年においては、石垣を積む職業の石工さんが非常に少ない状況です。また、石材においても国内での調達が困難な場合があり外国から輸入することもあります。
さらに、石垣が崩壊してから修理するのではなく、小さな変化が確認された時点での早急な対処が重要です。そのため、石垣を守るには、日常的な観察や記録保存もとても大事な作業になります。