マリヒメお嫁入り
の巻②

~工芸品にみる匠の技~

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江戸時代の武家にとって婚礼は「家」の盛衰に係わる重要な行事であり、嫁入りする時には家の格式や経済力を誇るように豪華で贅沢な「輿こし入れ道具=婚礼調度品」を持参するのがならわしでした。

輿入れ道具は当時の技術の粋を集めて何年もかけて作られたものばかりで芸術性にも優れ、その多くが今も文化財として大切に保存されています。

マリヒメの輿入れ道具に見られる漆器類しっきるい(箪笥や化粧道具など)は見た目にも美しく、またとても丈夫なことから非常に重宝されました。漆はウルシの木の幹から採取した樹液を精製したもので、日本では食器や家具のほか、建物の外壁、仏像の塗料として幅広く使われています。漆による保存修復技術は文化財修復に欠かせない技術です。

牡丹唐草蒔絵調度のうち十二手箱(文化庁保管)

守り刀も江戸時代武家社会における輿入れ道具の代表的なもののひとつです。護身用であると同時に、嫁ぐにあたっての覚悟を込めて持参するのがならわしでした。刀鍛冶や研ぎ師が刀身を作る一方で、こしらえと呼ばれる外装はさまざまな工芸技術と芸術的な意匠がちりばめられ、美術品として高い価値を誇るものも少なくありません。

木地蝋塗鞘大小拵(彦根城博物館)

嫁入り衣装では、清浄せいじょう無垢むくを意味する「しろ無垢むく」が婚礼衣装の代表とされてきました。一方、日常着といえば、上級の武家では打掛(娘は振袖)、中級以下では小袖が一般的でした。

昔の女性の着物を彩る色は現在の色とは異なるもので、その多くは草木染めと呼ばれ、花や草の葉、根、樹皮などの天然素材を用いて染色していました。江戸後期になると、木綿が庶民の間で一般的となり、藍染めが大流行しました。これは葉藍を乾燥・発酵させた「すくも」と呼ばれる原料を使います。

こうした染色の技術は日本人の美意識を作り上げながら確立されたもので、現代まで大切に伝えられてきました。

小袖 風景四季花文(文化庁保管)

唐織-椿牡丹蝶宝文様(文化庁保管)