よく来てくれた!
おぬしはこの国一番の腕前の漆職人だと、噂に聞いておったのじゃ。
ははぁ!
ありがたき幸せにございます。
さて、今日来てもらったのは他でもない。
ついに可愛い我が娘のマリヒメが嫁入りすることになったのじゃ。
嫁入り道具には、これまで誰も見たことがないような、豪華な品々を持たせなければならない!
それを作って欲しいのだ!
まずは器からかのぉ。
承知いたしました。
私の名にかけて、最高のものをお作りいたします。
では早速、最高級の漆を確保いたします。
私の相棒とも言えるとても腕のよい漆採り職人がおりますので、早速聞いてみましょう。
漆なら我が城にあったはずじゃから、それを使えばよいぞ。
とにかくすぐにとりかかるのじゃ。
何をおっしゃいます!
漆は、採る場所、採る時期、採る職人によって、全く性質が違います。
最もふさわしい材料を選ぶことも、私の技術のひとつです!
それが出来ないとなれば、中途半端な嫁入り道具を作るわけにはいきませんので、このお話はお断りさせていただきま…
待て待て、悪かった。
そう、最高級の嫁入り道具を作るには、ふさわしい漆が必要なのだな。
腕のよい漆採り職人と協力して、とにかく最高級のものを作ってくれ!
承知致しました。
では次に、最高級の道具の用意にも取りかからねば。
こちらも知り合いに道具作りの名人がおりますので、早速声をかけましょう。
道具なら、わが城にもあったはずじゃ。
わが城にはなんでも揃っておるからな、好きに使ってよいぞ。
何をおっしゃいます!
私の技術を発揮するには、経験豊かな道具作り職人が作った良い道具が欠かせません。
最高級の品物一つ作るにも、皆の協力が必要なのです。
殿にお許しいただけないとなると、このお話しお断りさせていただき…
いっ、いや、待ってくれ!
ワシはなんとしても最高級のものを姫に持たせてやりたいのじゃ。
最高の技を持つ職人たちの力を合わせて、どうかよろしく頼む!
流石、殿。ありがとうございます。
早速、漆を塗る刷毛から用意いたします。
マリヒメさまのため誠心誠意作らせていただきます。